師走に置いてかれる

小説だったり映画だったり主に作品の感想が多めだと思います

比翼恋理のだーりん個人的好きなルートランキング

STEINS;GATE関連作および科学ADVシリーズのネタバレに注意

 

 

 

科学ADVシリーズ2作目であり、シリーズでも屈指の人気を誇るSTEINS;GATEのファンディスクとして2011年6月16日に発売された本作。タイトルから推察するに所謂ギャルゲーとしての側面が強いと思っていたのだが、実際に全ルートを制覇した総括としては、そこまでラブロマンスとして踏み込んだものではなかったという印象がある。

本記事では本作の全6ルートを楽しめた順にランキングで紹介したいと思う。筆者はSTEINS;GATE本編に加え、フェノグラム、ゼロをクリア済み。現行で発売されているSTEINS;GATE関連のゲームとしては、今作が最後ということになる。

 

 

1. 星屑のデュプレット(まゆりルート)

本編をクリアしたのがもう随分と前のことなので、最初からまゆりが好きだったのかどうかは分からないのだが、ゼロやフェノグラムを経ていく中で、確実にまゆりが好きなキャラクターになっていった実感がある。

本編におけるまゆりの役割は、作中で本人が気にしているように若干重荷というか、苦しいことの象徴になっているということが少なからずあるだろう。その中で育まれた彼女への感慨は、よくよく考えてみればあまりフェアのものではないのではないか。これは本編では正ヒロイン的である紅莉栖とは、逆の作用が発生していたといえる。

完全な勘違いだったのだが、私はてっきりフェノグラムが発売された後にだーりんが発売されたと思っていた。実際にはその逆だ。加えてゼロもプレイしているため、まゆりが報われてほしいという感慨は、予想以上に強いものだったのではないかと思う。発売された時点での、ファンの感覚を正確に感じることは不可能だが、本作のまゆりルートはその願いを満たすものとして申し分のないものだった。

ほとんどパラレルという関係上、物語に対してあまり真剣になれない感覚が序盤は強かったのだが、だんだんとラブロマンスに開けていく展開はとても緊迫感があった。

まゆりとオカリンの関係性の中で、やはり特筆すべきことは人質をめぐる信頼にあるだろう。本編では強調されていたと思うが、この関係性がある種の呪いのようなものになっているという節もあるにはある。しかしながら、まゆりが人質であるという二人の共通認識は、世知辛い物事に囚われなければ呪いというよりは約束なのだ。

この約束をいつまで続ければ良いのか、またいつまで続けられるのかという絶対的な命題に対して、今作における解答はとてもカタルシスがあるものだった。

個人的に、まゆりが祭りで迷子になるたびに、オカリンが助けてくれたことを語る場面が地味にハイライトだと感じている。泣いた。

 

2. 楼閣都市のネプシュタン(フェイリスルート)

ゼロから登場した比屋定真帆を除けば、純粋に一番好きなキャラがフェイリスだということを最初に断っておくが、おそらくそれを別としても、6ルートの中でフェイリスのルートはとても満足度が高いと思う。

これは後述のルートにおける若干の問題なのだが、ギャルゲーのようなゲームではあるのにキャラクターをかわいいと感じる場面がそこまで多くないと感じる。つまり言いたいことは、このフェイリスのルートでは少なくとも満足できるだけの可愛いシーンがあったということだ。

可愛さという観点で言えば、フェイリスというキャラは少し狡いキャラクターではあるだろう。猫耳で猫語尾でメイドでピンク髪で声もかわいい。萌要素が詰まっている。

しかしフェイリスを敬愛してやまない人々ならお分かりだと思うが、実際にはこれらの目立った要素が鳴りを潜めている状態こそ、フェイリス・ニャンニャンの真骨頂なのは言うまでもない。

本作におけるそれらの描写も、新鮮味はないかもしれないが、満足のいくものだったと思う。ハイライトはやはり頭を撫でまわしたりしてじゃれあっているところだろう。

 

3. 黎明曙光のレシオ(萌郁ルート)

桐生萌郁というキャラクターは、あまり恋愛的に好かれやすいとは言えない。色々な要因があるとは思うが、やはりそれはほとんど喋らないことに起因する。喋ったとしてもゆっくり喋るため、これはVNとしてはあまり心地が良いものでもない。

しかし本作だーりんはファンディスクであり、おそらくそれを最低限許容できないプレイヤーはあまりいないだろう。少なくとも本ルートをクリアまでやった者には。

まゆりのルートを除いた中で、もっともギャルゲーとして成り立っている気がするのはこのルートだ。後付けなのかもともとあったものかはわからないが、彼女はとても奇怪でそして楽しい性格や性質を持っていることが惜しみなく表れている。

本編にも登場したボロアパートで一緒にカップ焼きそばを食べるくだりなど、なんとみすぼらしい体験だとは思ったが、それでもそれをもっともらしく感じさせるのが、桐生萌郁というキャラクターの妙だろう。

 

4. 根源のアガペー(鈴羽ルート)

本編においてただのサブヒロインの域にはとどまらないほどインパクトを残し、かなり重要な役どころを務める鈴羽だが、本ルートにおいて特質すべきことはほとんどない。

どっちかといえばこのルートは鈴羽のルートというよりはダルのルートなのではないかという感慨がある。ゼロで聞いた気がするあのプロポーズはおそらくここが初出だったのだと思うが、あれが聞けた時は少し嬉しかった。

ラブロマンスという観点で言えば、倫理的にどうなのかはわかりかねるが、未来からきたという性質上とても可能性を感じるような展開だったのではと思う。

個人的には、オカリンが嫉妬していると思われてラボがギスギスしているところがとても印象的ではある。あとBTTFパロディ。

 

5. 永劫回帰のレゾナンス(紅莉栖ルート)

正ヒロインであるわけで、やはり外伝であっても存在感はとてもある。いつも通りオカリンとの小競り合いは健在であるし、そういう意味では全ルートに渡って少し支配的ですらある。

しかし肝心の本人のルートは、あまり心地の良いものではない。オカリンとの絡み自体は前述したとおりいつも通りであるため、ある程度のクオリティではあるのだが、シナリオ自体はとても丁寧とは言えないし、爽快でもない。

牧瀬紅莉栖における問題点は、がっつり関わってくる本編が文句なしにマスターピースであったことであり、あれを超えるラブロマンスを単体として作り上げることは、おそらくパラレルである限り不可能の近いことではないのか。

 

6. 愛と幻創のシナジー(るか子ルート)

はっきりと言っておく必要があるのだと思うが、るか子は素晴らしいキャラクターであり、そして彼女が抱える感情もとても身に迫るものではあるのだ。STEINS;GATE本編および彼女のルートをクリアした者はそれを分かっているはずだ。

しかしこのルートのシナリオは、るか子とは関係のない部分でただただ雑然としていて読んでいてまったく楽しくない。ドラゴンが見えるというのは少し面白い要素ではあるのに、ギミックはともかくそれに対する解決の展開に起伏がなさすぎるし、なによりるか子と何か関係があって、ましてや彼を可愛いと言える場面が一つでもあったのだろうか。

ただただ無為に文字を読まされるだけの退屈なルートだった。るか子に対して居たたまれない気持ちさえ生まれた。

 

総括

STEINS;GATEの関連作は、本編の出来が良すぎることもあってあまり高い評価を得られてはいない。正統的な続編であったゼロはともかくとして、実際にフェノグラムや本作だーりんはファンディスクの域を出ない。

おそらくSTEINS;GATEが好きで、その中でもキャラクターが特に好きという人でない限り、やる価値は少なからずあるのかもしれないが、楽しめるかどうかは微妙なところだ。

今回取り上げた比翼恋理のだーりんは、正直に言えばフェノグラム以上に稚拙なゲームであるとは思う。しかしながら、まゆりのルートだけは、シリーズとして間違いなく作られたことに価値があるのも事実だろう。ゆえにまったく無駄な作品というのも正確ではない。

この記事を書いている2024年時点で約13年前のゲームであり、その時点でSTEINS;GATEの存在感は比類なきものであったのは容易に想像ができる。その後もフェノグラムやゼロと続いていき、一応完全新作の予告もされているという今の状況で、完成した絵を飾るようにまゆりのルートを観測できたことは素直に嬉しい。

科学ADVシリーズの流動は、最近ではあまり芳しいものではない。どのプロジェクトが生きているのか死んでいるのかも定かではないが、それでもシリーズが続いていくのであれば追いかけていきたい。